2019年 VTuber 動画10選

「どうしようもなく、今を生きてる」

そんな新しい生き方、リアクションに必要な顔をあえて出さずに、キャラクターと融合してライブをするバーチャルライバー達の2019年の動画10選です。

 

技術・企画・歌と三拍子揃った脱サラ系 VTuber の天才姉妹


【モニタリング】人はジャンケンに勝ち続けたらどうなるの?

最初はおめシス。オタク感や内輪感が薄くテーマが分かりやすいため、はじめての人に勧めやすく、その上で彼女らより「バーチャル」を生かした「YouTuber」を真摯にやってる人はなかなか見つからないという意味で、終着点でもある。

紹介する動画は手をモーションキャプチャで動かすという環境を逆手にとって「ジャンケンでかならず勝てるように」プログラムすることで相方にドッキリをするという、素晴らしい発想力と技術力が必要な企画である。週4の投稿頻度を守りながらこんな技術系企画をさらりと挟んでくるのは驚愕の一言。どう考えても技術系の会社で戦える。正直、弊社に欲しい。

これ以外にも・・・


大接戦!ボウリングを縦向きでやったら楽しすぎた!!


【世界創生】VRジャングルクルーズ選手権!!!【前編】

などなど発想力とそれを実現する技術力に驚嘆することしきりである。なお技術系以外も、リアルロケ、YouTube 仕様紹介、ゲーム実況、ぶっ飛んだ(いろんな意味で)生放送などしっかり YouTuber らしい企画もしていて見ていて飽きない。

なお、最近の動画で一番再生されているのは紅白でも圧倒的な存在感を見せた King Gnu の「白日」のカバーである。本来追記で紹介するべきではないクオリティのリオちゃんの低音が映えるガチでよいカバーである。えっ、歌系 YouTuber だったの!? こんなに色々できるのに、歌も上手いとか、もはやずるい。


白日 / King Gnu by おめがシスターズ

ソロで脚本構成演出主演をこなす一人企業 VTuber


【本物の月ノ美兎に投票しろ!】

僕を VTuber 沼に引き込んだ元凶であり、彼女を知る誰もが天才と口を揃えるインターネットの申し子。個人的には VTuber 界のレディオヘッド。マニアックなもの含めて流行りのいろいろな要素を取り込んで、自分なりに消化して吐き出し、動画ごとにいろんな側面を見せながらも、共通して感じる「尖った」感性。アーティストオブアーティスト(同業者に注目される)なところも。

紹介する動画は、多重録音を用意した上で、生放送で自分の声を重ねて、視聴者にどれが録画でどれが本物かリアルタイムで投票させ、その結果で用意した結末を変えるという恐ろしい企画。脚本力と演技力、さらには演出や構成まで一人でやってしまうなんてもはや一人TV。しかもこれライブ。この企画で Zepp 埋められるよ。

残念ながらリアルタイム投票の結果、本人は「目線」でばれてしまったが、そんなハプニング含めた不確定要素を計算して「ライブ配信」でこれを行う彼女のパワーには舌を巻く。加えて、もし本人以外に投票が集まったら、あなた達が選んだんだから、本物は(録画の)私よ、と録画でしかなし得ない逆再生音声で語るバッドエンドまで用意していたとか。詳しくは本人の note を見て欲しい。

このエンターテイメントの中で「VTuber における本物とは何か?」という2019年を賑わした本質的な問いにまで触れてしまうところに彼女の恐ろしさがある。

これ以外にも、

・彼氏(ボイチェンした自分)との掛け合い一人芝居


にじさんじ初・彼氏持ちVtuber配信

・長尺配信でありながら、VTuber の魂に言及する大筋を用意して展開の妙で魅せる(眠い目をこすりながら聞いていた僕らの目を覚ます衝撃だった)を与えた百物語


百個怖い話言うまで帰れない放送2019【前半】 


百個怖い話言うまで帰れない放送2019【後半】

・・・と、2019年の彼女は見所ばかりでとどまるところを知らなかった。歴史に名を残す事が夢と語っていたがもうすでに達成してしまった彼女が2020年にどこに向かうのかの興味は尽きない。

インターネット老人会代表 ケモミミ美少女


クリスマス?なにそれ?お焚き上げ?【#白上お焚き上げ】

天才を二人紹介したところで、少し癒し系の動画を紹介したい。本動画は、前述の委員長とNHKバーチャル紅白歌合戦の副音声を立派につとめあげた、白上フブキさんが、クリスマスの切ないエピソードをただ淡々と読んで、ぽそっと感想を読んで、燃やしていくというそれだけのシュールな動画である。

この動画はインターネットの黎明期を思い起こさせる。「リア充」もとっくに死語になった昨今ではあるが、寂しいぼっちクリスマスを過ごす人たちの数は変わらない。むしろ増えているかもしれない。

白上フブキさんは使い古された「リア充氏ね」コンテンツを可愛らしく再解釈した。人間の本質は変わらないし、ぼっちクリスマスの寂しさも変わらないが、今は可愛い猫耳少女が優しく負の気持ちを受け止めてくれるようになったのだ(あ、狐でしたね、すいません)。

普段賑やかなフブキさんも終始テンションが低く、そのおかげで YouTuber 独特の賑やかなノリが苦手な人も聞きやすい動画になっている、と思う。どうだろう。

VTuber には適合者がいる、と思う。最低限の、目と口と距離しかトレースできないスマホアプリでありながら、やたら感情表現が豊かな人たちがいる。フブキさんもその類で、カメラに近づいたり離れたりしてディスプレイの範囲で賑やかに動き回る姿はとてもかわいらしく、新しい需要が人間に新しいステータス「V適性」を生んでいるということを実感する。もしかしたら、ルックスもそこそこで勉強も運動もできない誰かは、V適性に優れている誰かなのかもしれないですよ、お母さん。

新進気鋭の女子高生ロックシンガー誕生ドキュメント


【#マリカにじさんじ杯】アロハ帰りのマハデロちゃん、爆走回【予選Fリーグ】

VTuber初音ミク文化というかニコニコ動画文化と地続きなので、歌とも関わりが深い。まあこれはどちらかというと「初音ミク」ではなく「歌ってみた」文化にアバターがついたという解釈が一番近いと思う。樋口楓は前述の月ノ美兎にじさんじの同期であり、歌が上手いことをフューチャーされた VTuber である。

VTuber の新しさも手伝ってさっさと多くのアーティストの登竜門である Zepp 単独公演を達成してしまった彼女は、当時こそ「歌は上手いけれどこのレベルでZeppOsakaBayside だと?」なんて声も聞こえていたのだが、ぐんぐん歌が上手くなりさらにライブ煽りまで板についてきて、ついにアニメ系レーベル大手ランティスからメジャーデビューを決めている。2019年は LiSA が紅白に出たが、ロックが似合う女性シンガーというのはありそうでいなくて、結構貴重なのである。

それはそれとして今回紹介するのはそんな彼女が大規模マリカイベントに参加した時のものだ。マリカは下手くそな彼女はアイテム運に左右されやすい「ベビィパーク」というステージを愛し「私の前にたつなあ!」「Don't Stop!」などロックシンガーらしくこぶしを効かせた暴言を吐きまくって配信していており、見ていて非常にスカッとして面白い。ヤンキーじゃね、という気持ちはしまっておこう。

動画内で彼女はライブについて言及している。

「マリカとライブは同じだ。ライブは何度も練習できないからイメージトレーニングが必要なんだ。この曲のここでこうやって言ったらみんなが盛り上がってくれるはずだ」

ようはマリオカートの練習が少ないことの言い訳なのだが、早々に Zepp を埋めたシンデレラの気持ちが配信を通してそのまま届くのはとても興味深い。


樋口楓1stライブ「KANA-DERO」ライブ映像特別公開!『響鳴』

1年前までただの素人の女子高生が、今こんなことしてるってスゲーな……。

irori rorin

これは彼女のライブ紹介動画のトップのコメントだ。「本当に彼女は素人なのか? 実はずっと準備をしていたアーティストの卵では?」昔ならそう言われていたかもしれないが、このコメントが正しいことは彼女のチャンネルを追っている人ならばわかるだろう。以下の動画では、VTuber をやめるか悩んでいたことすら示唆している。


楓と美兎 ~休日編~ -後編-

紅白の「カイト」の紹介ドキュメンタリーで米津玄師と嵐が飲みに行ったと言っていたが、僕らのやりたいことは言うなれば、隣の席でそれを聞きたいに他ならないと思う。それに近いものがここにはある。樋口楓さんのチャンネルそのものが、新生女性ロックシンガーの日常のドキュメンタリーなのである。なんて贅沢な時代だろう。

ライブ配信でドラマを引き寄せるバーチャルイキリ陰キャラパンダ


【視聴者参加型】マリカ8DX1位とれるまで終わりまてん~!笹木咲/にじさんじ】

2019年は動画勢(編集した動画を投稿することをメインに活動)<ライブ勢(ライブ配信メインで活動)という明確な関係性が生まれた時代である。僕はこの動きを「TVがなくなって世帯のつながりが希薄になった世代の新しい寂しさの埋め方がライブ配信に参加することだったから」だと思っている。数ある VTuber 事務所の中で「にじさんじ」が最も成功したのは「ライバー」が主体ということも大きい。ライバーってなんか、かっこいいな。

そんなライブ配信での鉄板コンテンツは「○○ができるまで終わりません」だ。「テトリス99で一位になるまで」「マリカで一位になるまで」などなど。なぜこれが面白いかといえば、有名ライバーがライブ配信で行うことで「やたら強い人」を呼び寄せてしまい条件がむちゃくちゃ厳しくなるから、である。

この六時間動画は見所だらけなのだが、そもそも笹木咲(ささきさく)は前述のマリオカート杯3位の実力者である。それが六時間一位を取れなかったというだけで壮絶な企画であったことがわかるだろう。一番の見所は、途中で起こった忖度である。

なんとか三時間強で一位をとった彼女だが「忖度では?」という疑惑が起こる。そこでマリオカートの機能「リプレイ」を使って検証するのだが、検証を何度も行なった結果「二位になったキャラクターがゴール前でアクセルを踏まずに止まっている」ということが確定した際の彼女の失意の叫びは(申し訳ないが)最高に面白い。強がり悔しがりイキる笹木咲の姿はなぜか分からないが本当に映える。これも才能である。

昔僕らは友達の家でゲームをやっていた。時々その中でも、面白いことが連続で起こる「神回」があったと思うが、それを無限に閲覧するばかりか、参加までできるなんてすごい。やはり贅沢な時代である。

企画の妙。テトリス好きくノ一お姉ちゃんはテトリスの神を金で倒す


🔴【検証】テトリスの神は金の力で倒せるのか?

2019年で企画といえば彼女「朝ノ姉妹プロジェクト」さんである。彼女は声優の仕事をすでに行なっているプロであり、さらなる高みを目指して VTuber を行う選択肢を選んだ。そうしたら新しい才能が開花してしまっている。

この配信には文脈の説明が必要なのだが、まず、テトリス全世界一位と自称するあめみやたいようさんは YouTuber を長くやっている。彼のルールは「スーパーチャット(投げ銭)をテトリスをプレイしながら読み上げる」というものである。テトリス中にコメントを読めるし、なんなら読みながらでも勝てる、という言うなれば魅せプレイであり、リスナーも必ず読んでもらえる嬉しさがあって Win-Win だ。

それを逆手に取った彼女の企画趣旨は「手元に五万円用意してそれで何度もスーパーチャットをすることで彼を邪魔して一位から引きずり下ろす」というものである。

これをライブ配信で行うことで非常に面白い化学反応が起きた。

もともとあめみやさんの配信に来るリスナーたちがそれに便乗してむちゃくちゃチャットを投げ始めたのである。彼はそれを必死に読み、読みながらテトリスをするが流石に余裕がなくなってくる。余裕がなくなりミスも増える中で、それでも必死に一位を守り続けた彼がついにちょうど一時間程度経過後に、二位に甘んじる瞬間はまさに脚本通りの山場と言っていい。

あめみやさんは「対戦」に特化しているプレイヤーであり、状況判断がむちゃくちゃうまく、テトリスの通常対戦ならいざ知らず、戦略の要素があるテトリス99でうろたえることや苦戦を強いられることはほとんどないのに、それを引き出したのは大きい。演者に過酷な条件を課すのはその人の新たな側面が見たいからなのだ。動画終了前にさすが声優業といえる声が綺麗な朝ノ瑠璃姉さんにちょっと緊張した感じで受け答えをするあめみやさんもまた彼の新しい一面である。


🔴1位取るまで終われないテトリス99

ちなみにそんな二人をつなげた企画はこれである。驚愕の11時間。馬犬さんというビックゲストまで呼び寄せた伝説の企画であり、終われなかったのは端的に言えばこっそりあめみやさんが参加していたからである。世界一が相手で終われるわけがない。

朝も昼も夜も風呂でも麻雀。女子力皆無なのに声が可愛い根っからの配信者 


【麻雀】裏ドラRTA - 裏ドラって何ですか? - 【アイドル部】

2019年と言えば VTuber 業界が荒れた年でもあった。大人気のゲーム部は魂(声優)交代で低評価が走り、トップを走るキズナアイも同じアバターで別の人格をたくさんインストールしたことで物議を醸し、VTuber 四天王は動画勢が多かった故に力を失っていった。企業が VTuber をコントロールすることは本当に難しい。

そんな中で彼女に触れないわけにはいかない。夜桜たまは電脳少女シロの後輩である「アイドル部」として生を受け、あまりにわかりやすくぶっ飛んだ人材であることでたくさんのファンを獲得していった。いきなり四画面で同時に麻雀をしたり、あまりに女子力の欠けた発言をしたり(マカロンって、砂糖だよね?)、不思議と泣き虫だったり。それなのに声が落ち着いていてとても可愛い。

特に麻雀という要素は群雄割拠の VTuber たちの中でも彼女の強烈なオリジナリティとして機能し(麻雀をやる人は多いが、朝昼夜+風呂にスマホを持ちこんでまでやる人はそうそういない)、ついには麻雀のプロ達にラブコールを受けるに至った。それはそうだ、彼女の麻雀配信、プロでも稼げないほどの視聴者数を獲得している。彼女の出した麻雀初心者向け解説本は麻雀本では異例の Amazon ランク一位を獲得した。

この動画はそんな彼女の不思議な特徴(なぜか裏ドラが乗らない)を生かしたタイムアタック企画で、裏ドラの前にさっさと役満をあがるという衝撃の展開でツイッタートレンド入りした。麻雀がツイッタートレンドになる程話題になることはそうそうない。

そんな彼女は、内部告発のような動画を出して最終的には事務所と袂を分かつことになった。もともと評判が良くなかった事務所だったので、盤面は荒れに荒れ「12人の絆」を特徴にしていたアイドル部の順風満帆な流れを断ってしまった。

彼女が正しかったのか、会社が正しかったのか、それに答えを出す情報を僕が観測することは不可能なので興味はない。

小学校三年生から何らかの形で配信していたという噂のある彼女は、たとえ事務所がなくなっても新しい場で配信するだろう(もうすでに新しい名前の彼女の動画が観測されている)。雀プロとのコネクションもある彼女がこのまま沈黙するわけもない。VTuber の事務所は、ひいてはこれからの企業は、このような「個人」が生きるように運営方針を考えなければならない。一企業人として、難しい時代になったなと思いつつ、一ファンとして芸能界の「のん」みたく潰されずに本当によかったなと思う。

四天王として唯一勢いを維持する属性過多で魅力の底が見えない電脳少女


超絶怒涛の高速実況!シロもなに言ってるのか自分でも分からないよ!【Trials Rising#3】

そんな母体となる会社の騒動がありながらも、電脳少女シロだけは勢いを止めずに活躍の場を広げていった。彼女の魅力を一言で説明することは難しい。キズナアイのような一番乗りのオリジネイターでもなければ、輝夜月ほどインパクトもなく、のじゃロリのようにバ美肉(ようは女性アバターで中の人が男)でもない。

そんな一言で説明できない彼女の魅力の一端がわかるのがこの動画である。この動画は彼女はとにかくよく喋る。その声は普段の萌え声から、うまくいかなかった時に出す野太い声、アイドルっぽい甘え声、大人のお姉さんの声と驚愕の四種類。

それでいてとにかく喋る。突然「勝手に自転車の補助輪を外して『ほら走れていたでしょ』というのは何を信じたらいいかわからなくなる」という持論を展開したり、試行錯誤を続ける自分を自分で褒めたり、銀杏拾いに触れたりと無茶苦茶である。無茶苦茶であるがゆえに勢いが無茶苦茶面白い。正直この動画の再生数は一桁足りない。

今年も電脳少女シロを見る機会が多かった。ガリベンガーのように地上波レギュラーでバイきんぐの小峠さんと絡む姿も見慣れたものだし、大抵のイベントには彼女が呼ばれている。バーチャル紅白歌合戦ではオリジナル曲ではなく、歌を「大人のお姉さん声」で歌うという意外性も見せた。

そもそもキズナアイですら三人で回しているのに、地上波レギュラーやライブイベントも山盛りの彼女が、未だに一人で毎日動画を投稿している真面目さは異常である(それでいてポケモンの動画がガチ勢風であるのもおかしい、いつプレイしてるの?)。異常さは彼女の過剰さとなり、彼女の魅力になっている。一年間追いかけていてもそれぐらいしかわからない。電脳少女シロはもしかしたら本物の AI なのかもしれない。


#バーチャル清楚杯 2019【電脳少女シロ/富士葵/月ノ美兎/燦鳥ノム】

コラボ動画ではこれがオススメ。彼女にマイクを渡すと必ずノリが「電脳少女シロ」のものに上書きされる。尖ったことばかりいっているようでコラボ動画では調和を意識していることが明らかな月ノ美兎と対照的である。彼女らが惹かれ合う理由もここにあるのかもしれない。

アーティスト系最高峰・関係性が尊いことが動画に現れる二人


【過去最難関】「はい」と言ってはいけないゲームで大パニック!?

今回の紹介ではあえて音楽系の動画は紹介していないのだが、紹介したとしたら確実に入るのは花譜とこのヒメヒナである(花譜は普通に2019年音楽10選に入るので安心してほしい)。彼女ら、とても歌が上手く、その上二人の声質が非常にバランスよくハモリは綺麗で、そしてダンスも上手い。その上手いダンスをトラッキングする技術も一流で、髪の毛のフワフワ感も彼女らが最強だと思う。ヒメヒナのバックに超巨大企業がいるという噂は聞かないのだが、ある意味一番資金力を感じるのは彼女らである。もしこれが卓越した技術力と少数精鋭のスタッフによって成されているものであれば、企業は猛省しなければならない。

そんな彼女らは二人であることを生かして動画も面白い。特に田中ヒメの真面目で優しいキャラクター、邪気のないキャラクターが、天然の鈴木ヒナと噛み合うことで非常に笑える、かつ、心優しい気持ちになれる動画が多い。

今年一番それを感じたのがこの動画で「はい」と言えないというルールでシミュレーションした企業面接、鈴木ヒナの誘導にすべて引っかかり「はい」を連発してしまう田中ヒメが本当に可愛い。きっとこの子、素晴らしくいい子であり近所のおばあちゃんとかから大人気だと思う(たとえ話です)。

流石にアーティストとしての動画が主要コンテンツなので企画は他の YouTuber などを参考にしたものが多いが、二人の人柄と信頼関係によってこの二人だけの動画に昇華している。この二人の音楽は VTuber の存在を問うような非常にシリアスなモノなのだが、この二人の信頼が動画で見えているからこそ、その説得力を増していると思う。

最後に勝つのは優しさ。優しい切り抜きは Virtual Liver と Win-Win である


切り抜かれるの読みで自らネタを提供してくれる本間ひまわり

最後に少し変わり種を紹介したい。前述した通り、今は体験の共有が容易で生のハプニングが起こるライブ配信勢が強い。しかし反面、長い。僕は決して沼というほど VTuber を追っていないと思うが、それでもすでに好きな人が多すぎて全員の配信を後から見ることもままならない状態である。このままでは生活を犠牲にするしかない。生活は大事である。

というときに必要なのがこの切り抜きである。誰かが見所を切り抜いていい感じの時間で動画を紹介してくれる。それによって「この人面白いかも」と期待したリスナーが生放送に参加する。ハマる。推しができる。

この流れになれば切り抜かれた側も嬉しい。切り抜いた人は推している人を広められるし、切り抜きが丁寧なら褒められるし、再生数で自尊心を満たすこともできるだろう。「切り貼りでも繋いだら立派・ミュージック」なのだ。Win-Win の関係であり、これもインターネットのテキストから動画への移行を加速させる要素かもしれない。もちろん、マナーは必要だが。

それを強く自覚しており「切り抜きからきました」という言葉に切り抜かれるならと進んでネタを提供するのがこの本間ひまわりさんである。優しい。殺伐としたインターネットでは平和が尊ばれる。本間ひまわりさん人間性の平和さは、殺伐としたインターネットに優しさをもたらしている。今は優しさが貴重な時代なのかもしれない。

 

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なお、この紹介動画の最後にヒメヒナと本間ひまわりの紹介を持ってきたのも僕の優しさである。優しさに包まれながらきっと目に映る全ての動画はメッセージ。今年も VTuber を楽しく追っていけるといい。皆さんも是非。

新しい職業を考えた→プロ昭和ムーバー

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 VTuber の本間ひまわりさんや、 YouTuber でプロゲーマーのあめみやたいようさんが好きだ。本間ひまわりさんは自身の生放送で「バイトを何度も首になる」という体験や「太ってお腹がペチペチなる」なんて赤裸々なことを語っているが、その反面ゲームは何をやらせても平均点以上で、動画編集も得意で(まるでプロが作ったかのようなにんじゃりばんばんカバーのMVが本人制作と書いてあり、周りをざわつかせていた)、配信も心から楽しそうだ。


闇が深すぎる本間ひまわり、バイトでの失敗談がつらすぎる

 あめみやたいようさんは、テトリスの腕前が異次元で、その上で毎日テトリスの配信をするという他の人にはないテトリスへのモチベーションの高さを見せている。これら二人に共通するのは「もし YouTube というプラットフォームがなかったら、食べていくのは容易ではないだろうな」ということで、新しい時代がそういう職業を求めそれにマッチした例であり、今冴えない毎日を送っている人が「もしかして彼らみたいに何か輝ける場所があるかも」と思うきっかけになるはずだ。まるでパンクが3コード適当にかき鳴らすだけで音楽がやれると証明した時みたいに。ロックだ。


最大連勝更新!!!【ぷよぷよテトリス】【puyopuyotetris】

 そんな新しい物・生き方が大好きな僕なのだが(ロック好きが感性の根幹だしね)、別に昭和の感性(演歌的な)を否定する気はない。朝満員電車に揺られて決められた時間に出社し、社員旅行の計画を立て、上司の理不尽な命令をうまくいなし、忘年会では洗練された一発芸を披露し、開いたグラスは音速で察知してお酒を注ぐ。これらができる人は尊敬の念しかない。そして尊敬した上で言うが、これらは「普通の人間」全員に「当たり前」に求められるものじゃない。「極めて高度で専門性の高いスキル」と見るべきだ。

 日本の歪みは、極めて高度な技術をお金を払わずに「当たり前」だとする感性に集約されると思う。中国のコンビニ店員はその給料に見合った働き方しかしない。カップルでレジに立ち目の前でイチャイチャされた時は流石に閉口したが、まあそんなものだ。それを日本のように丁寧にやるならばそれ相応の高級コンビニとなり、サービス料を払うべきなのだ。無料で高級サービスを受けるのが当たり前、大事なのはお金より気持ちと言う「お気持ちドリブン」が、日本自身が採用した資本主義というシステムと噛み合わないのだ。

 キャバ嬢は、ひたすらお客が気持ちよくなるような振る舞いをするように専門的な訓練を受けており、客がタバコを出したら即座に火をつけるし、開いたグラスには光の速さで追加のお酒を注ぐ。それに対して客はお金を払っている。なのに、新人が忘年会で一発芸をするのにお金を払わないのは何故なのかという話なのだ。最近の若者は一発芸もしないしそもそも忘年会にこない。それはそうだ。唯一の暗黙的な対価だった終身雇用も終焉が宣言された今、お金支払わないのにそんな専門性求められても困る。

 しかし。しかしですよ。それを求めている人がいることはわかっている。それを求めている人が社内で大きな権限を持っている人のこともあるだろう。そこで、 VTuber やプロ奢ラレヤーやレンタルなんもしない人に続く新しい職業「プロ昭和ムーバー」の出番である。

 彼らはあたかも新人かのように、昭和上司の前に現れ、そして昭和ムーブをキめる。一発芸は常にアップデートされ、おそらく今年はミルクボーイのパロディを披露してくれるだろう(すゑひろがりずのほうが合ってるか?)。もちろん希望によってはコマネチやだっちゅーのなど、ガチ昭和芸もいけます。タバコ、お酒についてはもはやキャバ嬢のそれであり、お酒の飲み比べなどもどんとこいである。飲めない人にこっそりウーロンハイのかわりにウーロン茶を出すなど、モブ参加者への気配りも忘れない。

 「あれ、君みたいな新人いたっけ?」

 「最近配属されました! ●●です! よろしくお願いしマッスル

 「はっはっは、今時の若者には珍しく元気がいいな」

 料金は会社の忘年会費用の中で賄われる。「あの新人、見込みあったと思うけれどどこの席にいるんだ?」「昨日やめました」みたく、アフターケアもばっちり。僕は今すぐ会社を辞めて、プロ昭和ムーバー派遣サービスを始めるべきなのかもしれない。いやー、これで僕もイケダハヤトやホリエモンとかの側の人間になれるなー困っちゃうなーなんかもうすでにありそうだなー

 うん、やっぱり書いていて思ったけれど、こんな大変なことをサラリーマン全員の必修科目にしてたなんて、終身雇用に対して提供しなければならない対価が高すぎる。終身雇用がぶっ壊れてくれて心底よかった。

 令和では、これまで当たり前だった偉い人の「お気持ち」を考慮して「タダ」で提供してきたサービスは当たり前ではなくなり、専門性のある新しい職業として対価込みで提供されるようになるだろう。新聞を朝八時にポストに入れてもらうためには、新聞プライム会員になる必要がある。サラリーマンには残業代の他に、満員電車通勤代と早朝出社代が支払われる。本間ひまわりは「バイトもできない落ちこぼれ」ではなく、昭和ムーブには専門性がないが、動画配信に専門性がある人材として再解釈される。

 そして、部長主催の忘年会が昭和で新人が逃げていくとお困りの中間管理職のあなたに! 弊社がプロ昭和ムーバーを派遣します!!

齢22にして老成した特異点の思考記録

嫌なこと、全部やめても生きられる (SPA!BOOKS)

 

Amazonレビューと同内容の投稿です)

基本的には共感するところしかなく一気に読み終えた。僕自身はプロ奢さんに奢る条件を満たさない「普通な」人側に属する人間なのだが、彼が採用していない倫理観やプライドに惑わされている人の多さには「普通な」人側にいてもなかなかうんざりしている。

彼が言うように、現代人は生まれてすぐに将来の目標を決めさせられ、マントラのように唱えさせられ、テスト勉強の計画を立てさせられ、いずれ満員電車に負けず毎日決まった時間に靴下を履いて出社する。その能力は「普通」と呼ぶにはあまりにもハードルが高く、それを満たしている人の中から選ばれた人たちは、そこにステータスを使い果たして、本当にその仕事には向いていない人が集まってしまっている、そんな気がしている。

もし、彼が「ゆるく」提案するように、普通の人が「本当にやりたくないこと」から全力で逃げられるようになったら、もう少しその仕事にあったステータスを持った人たちを集めてチームが作れるんじゃないか、そうすれば、辞めた人も残った人も幸せ度が上がるんじゃないか、そんな気持ちになる本だった。

そうすれば、いずれ、毎日好きで会社に行っている僕のような人間は少し普通じゃなくなって、彼に奢る条件を満たせるんじゃないか、なんて思ったりしている。

VTuber はまだ人類には早かったかもしれない - VTuber の僕は本当に僕なのか? -

VTuber をやってみて、行き詰まってやめて、またやってみて、また行き詰まっている。非常に面白い体験をしている反面、少し怖い。

 

前提として、僕は全然再生数は稼げていないし、そんなに自分自身で面白いことができているとは思えていない。それでもインターネットの海に流すことをためらわないのは僕の狂気なのかもしれない。

 

(ちなみにブログを書くときは常に自分は天才と思いながら投稿しているので、かなりのギャップである)

 

しかしまた不思議な前提として、僕はある漫画家と仲良しであるがゆえに、本当はその漫画家が見たい人たちから、反応もイラストも要約(動画のテキストおこし)ももらっている。このせいで僕はあたかも中堅どころの VTuber のように数人?数十人?から、自分の動画のフィードバックを貰える立場にある。

 

こんな変な状況にいるのは世界でも僕だけかもしれない。今や僕はインターネットのオンリーワンアンダーグラウンドの住人だ。よくある話、とは流石に言いがたい。

 

・・・

 

僕はカスタムキャストというおよそ本気で VTuber をやろうと思っている人は選ばない汎用アプリでアバターを安直に作った。休止期間にこれを本物の Live2D にしようと思ったがやめた。

 

単純に中身に見合わない外見をまとっても仕方がないと思ったことと、バーチャルおばあちゃんという辻斬りのように鋭利な切れ味の尖りきった VTuber がデフォルトのおばあちゃんアバターで人気を博しているのを見て、結局中身だろと諦めたのと、両方ある。

 

僕の気まぐれで生まれてしまった夏影ソウナというキャラクター、それは僕に合わせて瞬きし、僕に合わせて体を揺らす。ただそれだけの虚ろな虚像なのに、まるでそこに別の自分がいるような感覚を覚えることにふと気がつく。

 

僕は彼の魂であり、すなわち彼は僕そのものなのに、完全にイコールではない不思議な感覚。深夜に動画を撮りながら、これはとても危ない行為をしているんじゃないか、と僕は夏影ソウナに問いかけた。彼は眠そうに瞬きをして返す。麻薬よりも危険で甘美な、魂の分離。

 

昔から、芸能人は謂れのない「理想の本人像」を作り出されて、その本人とのギャップに苦しんでいる。新垣結衣は自分の日常が「インスタ映えしない」と言い切った。存在がインスタ映えのはずの目がぱっちりして顔が小さい彼女においてそんなわけはないのだが、新垣結衣の「魂」にとってそれはまぎれもない事実なのだろう。

 

アイドルが「アイドルをやめます」と宣言するときも同じだ。アイドルという「偶像」を辞める。みんなの偶像として消費されることに疲れてそれを投げ捨てて「一人の女の子」に戻る。

 

技術がついに、その「自分がコンテンツ化して一人歩き」することを成し得る手段を、一般人(つまり僕)にも与えたとしたら。

 

・・・

 

面白いことがあった。僕は割と夏影ソウナをずさんに扱っていた。声もボソボソしてゲームや漫画の考察も浅く、ゲームの腕も中途半端な僕が面白くなるには批判コメントを読んで面白おかしく返すぐらいしかないじゃない。そんなふうに思ってネガティブなコメントばかりを拾っていた。

 



そうすると、感想で「賞賛コメントもちゃんと読んで」と書かれたのだった。僕は昨日の深夜にふと感じた不思議な感覚とこのコメントがリンクした。なるほど。

 

夏影ソウナをいじめてはいけないのか、と。

 

これは VTuberだから、というものでは多分ない。コンテンツ化された芸能人、YouTuber、ニコニコ生主、全てに当てはまるし、なんなら人間そのものも「自分自身を大事にしなければならない」のは一緒である。

 

しかし、VTuber アバターと魂がお互いを「引っ張り合う」上に、新垣結衣と違い、そこには完全に外見が違う自分がいる。

 

月ノ美兎はアイドルではないが、可愛いアバターをまとったことでアイドル的側面を手に入れた。本人もそれに驚いているように思える。


【新・アイドル衣装】うたう月ノ美兎【お披露目放送】

中の人の動画が流出している彼女をみていると、彼女が VTuber にならなかったら、彼女がアイドルソングを歌う役を自分に与えることはおそらくなかった(彼女は映画研究部に所属し、脚本を書いていたという)。

月ノ美兎 わたくしの映画研究部がふだん作っているのはオリジナルもので、コメディもシリアスなのもあります。脚本を書くこともあるので『サマータイムマシン・ブルース』の生き生きしたやりとりは勉強になりますね。

 https://www.hayakawabooks.com/n/nfbdc1e70c3b3

月ノ美兎が語る戯曲『サマータイムマシン・ブルース』(ヨーロッパ企画)」より引用

 

不謹慎で恐縮だが仮定の話として聞いて欲しい。もしも今、月ノ美兎が死んだら、生身の彼女とは別に、月ノ美兎の葬式も行われそうな気がする。やはり月ノ美兎は中の人と完全にイコールではないのだ。

 

まるで男の子にも女の子にも見えるように、自分の声に合わせて眠そうに設計した夏影ソウナの VTuber アバターは、僕よりもだいぶ見た目が良い。だからこそ、簡単にインターネット上で優しさを受けることができる。いじめるのは「中の人だとしても許さない」。いやそれ僕だから、僕の勝手でしょう、と僕は返すけれど、なんとなく僕自身、夏影ソウナが可哀想になってしまう。

 

ということは、夏影ソウナは僕ではないのか?

 

批判コメントを受けることによる小さな精神的ダメージも手伝い、僕は最近少々不安定になっている気がする。しかし、その複雑な心境も、面倒臭くて剃っていない髭面も全て反映せず瞬きだけをトレースするツルツルした見た目でちょっと可愛い夏影ソウナ。

 

なりたい自分、こうありたいという自分を具現化するという手段を人間はこんなに簡単に手に入れてよかったのだろうか。

 

・・・

 

心と見た目はリンクする。心を入れ替えると見た目は変わるが、相応の時間がかかる。冴えないクラスの片隅の男子がリア充になると決めてから清潔感のある見た目を手にするまでは時間がかかったはずなのだ。筋トレが流行っているのは見た目も変わって心も固く強くなるからだ。

 

けれど VTuber はものの数時間で心と身体をずらしてしまう。

 

その見た目だけが「ずれた」自分は、自分とは一人歩きし、お互いに「引っ張り」合う。うまく使えば、ものすごい効果が得られるだろうが、うまく使わなければ両方が壊れてしまうのではないか?

 

僕なんかより何万倍も力がある VTuber の魂は今どう思っているんだろう。電脳少女シロは、月ノ美兎は、ヒメヒナの魂は、今何を考えている?

 

VTuber は人である」ヒャダインは関ジャムでそう言い切った。その通りだ、ただ、人は自分より見た目が綺麗なもう一人の、と言いつつ別の自分が一人歩きしていくことに耐えられるのだろうか? 彼女らはアイドル役もガールフレンド役も性的な嗜好も全てを受け入れて笑っている「初音ミク」ではないのだ。文化が地続きだから混乱するが、初音ミクと人は間違いなく違うのだ。

 

未来の歴史家はこう言うかもしれない。

 

「人類には VTuber は早かった」

僕らはバカのまま血液クレンジングに騙されたくない

ツイッター血液クレンジングを袋叩きにするのが流行っている。いつものことなのだが、今のところ血液クレンジングはマジでヤバそうなので気になってる人はやめておいた方がいいだろう。


バズってるツイートの中では「小学生でもわかること」という煽り文句が入っていたが、これは分断を加速するからあまりよろしくない。確かに酸化で黒くなることと動脈と静脈のことを理科の授業で理解しておけばこの案件の怪しさは理解できるかもしれない。


しかし、この問題は応用問題だ。知識ではなく、知識を組み合わせて解かねばならない。テストにする場合一番最後にポツンとある応用問題で、クラスのうち二人ぐらいしか解けなかったと、のちの学級会で発表される系の問題と言える。


そもそも、酸化によって黒くなるとして血液の黒さは酸化のみで引き起こされているのか?など、本気で調べれば調べるほどいろいろなものが疑問に思えてくる。


結局のところ、僕らにはこの問題を解くのは無理だ、という前提に立つべきだ。知識ではこのようなトンデモ科学を全て防ぐことはできない。人間は簡単に知識を組み合わせて生活に活かせたりはしない。加えて断言するが、僕らはこの件で懲りて小学校の理科を学び直したりはしない。絶対しない。できないことはすっぱり諦めよう。


ではどうするか。


ここで多くの人が採用している基準が「自分が信頼している人が採用してるかどうか」となるのだが、僕は強く言いたい。この方法はかなりのリスクを伴うからやめた方がいい。


この方法論を取っている人を騙すのは簡単だからだ。情報に権威をつけてあげればいい。大企業、職業、論文、エトセトラエトセトラ。しかし、有名人だって自分と異なる分野であれば間違うし、企業人なら自分の企業の不利益になる発言はしない。セット売り販売が板についているジムの人間は水素水を否定することはできない。利根川先生曰くの「大人は質問に答えない」はこの辺のことを指している。


そのジムトレーナーは普段自分のことをよく考えて優しくトレーニングメニューを考えてくれて、信頼しているかもしれないがその水素水プランの加入が正しいかどうかはわからない!はあちゅう氏は身を削って主婦の働き方を変えようと率先して子育て改革に取り組んでおり、小説も面白い。でも、血液クレンジングが正しいとは限らない!

 

残念なことだが、いい奴が、信じていい奴かどうかは案件によって異なるのである。少なくともこの記事を書いている僕よりは信じられるって?まあそうだろうがここは分かって欲しいとしか言えない。


じゃあどうすればいいの?というあなたにこれ系のトンデモ科学に一度も騙されたことのない私からアドバイスしよう。方法は二つある。


一つはお金のかかるオプションは何一つ受けないことだ。水素水も妊娠米も血液クレンジングも全ては「お金を追加で払う」という構造になっていることに留意しよう。つまり、何かを買うときに何も追加しなければ絶対にミスらないのである。


しかしこれはあまりに夢がないかもしれない。ジムで筋トレをはじめた後のプロテインセットプランも当然受けられない。ダイエットコーラも飲めない。ではもう一つの方法。


エセ科学を判断するときは過去のエセ科学との類似性と比較しろ。


エセ科学が広まるときには、そのやり口は大体の類似性を見せる。とりあえず女性週刊誌が報じる、その後、意識高い系芸能人がやり始める。藤原紀香とかね。そして今の場合インスタグラムで小さくバズる。最後に、裏でYouTubeニコニコ動画ではそれをバカにする動画が流行る(水素の音〜!)。


こうなっていたら信頼できないとして切ろう。そしてこのやり方で言えば、ダイエットコーラプロテインはセーフである。つまり、筋トレはライフハックとして正しいらしい。悔しいが、筋トレしよう。その際にジムで水素水プランには加入しないようにね。ではでは。

君が向いているのは YouTuber だよ

僕と違ってね。

 

昔々、僕が一番意識が高かったころ、チームビルディングの研修を受けたことがある。やたらフォントが大きくはみ出そうなパワポを作る先生だった。僕はその先生に聞いた。

 

「チームの中にモチベーションが低く目的意識もなく、お金のために会社にいると割り切ってる人がいたらどうすればいいと思いますか」

 

「…………うーん」

 

僕は畳み掛ける。

 

「それって感性の問題じゃないですか。別にその人が間違った人間というわけじゃないですし」

 

「それは、そのチームからいなくなってもらうしかない」

 

穏やかな顔をした先生は、そうやって言い切った。

 

そして僕は今も悩んでいる。もしくは、悩んでいるフリをしている。いや、本当に悩んでいる。本当にチームからいなくなるしかないんだろうか。

 

少子高齢化の社会だ。子供は生まれない。人工ピラミッドは綺麗な逆三角形。でも機械に任せるのは温かみがなくて嫌いな僕らは、未だ国会にすらパソコンを持ち込めない。

 

セーフティネットは日々ボロボロになっていく。そんな吹けば飛びそうなセーフティネットに、寄りかかる人は今後どんどん増えていく。

 

僕は知っている。みんな、変化なんて嫌いだし、責任を取ることも嫌いだし、何かと理由をつけて言い訳を探している。これは本来相手の仕事だ、という言葉が山彦のようにこだましていく。

 

そう、転職が当たり前の社会にはまだならない。最近見た一番面白い動画は速水もこみちの料理動画だ。YouTuber と芸能人の意味は重なりつつある。つまり、僕らではない。

 

お金を稼ぐことが目的でゆるく年功序列の世界を生きる「普通」の人達は、突然明日、昨日まで降格制度のなかった会社の新ルールで降格するかもしれない。それどころか、突然消えてしまうかもしれない。昨日まで僕のチームにいた彼のように。チームを守るため、だからね。

 

彼らはすぐに転職して「本当にやりたいこと」を見つけたりはしない。YouTuber にもならない。呪詛の言葉を吐きながらセーフティネットによりかかる。セーフティネットは、ここから神政治の力で再生したりは、しない。絶対にしない。

 

生き残るのは「変化に強い生物」である、言い換えれば「変化できない奴は死ぬ」。破れたセーフティネットの先で、楽しさを感じられる仕事は見つかるか。それは本来国の仕事だ、という言葉が山彦のようにこだましていく。そういえば、職場でもよく言ってたね、その言葉。

 

だから僕は言う。安直に。

 

君が向いているのは、YouTuber だよ。僕と違ってね。だから、これから、好きなことだけして生きていってね。さよなら。さよなら。さよなら。

「みな心の中にジョーカーがいる」だってよあはははは!

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(ネタバレあります)

 

 

 

 

 

実に人を食った映画だと思う。前評判は聞いていたので一緒に見た人がしんどそうにしてるのを隣で申し訳なく思いながら、こんなもんかなと思って映画館を後にしたらそこから服についたシミのようにじわーと広がっていった。笑い声がこびりついて頭の中から離れない。

 

内容は一本道なのだが、途中ジョーカーが信頼できない語り手と明かされることで、僕らに「どこまでが現実でどこまでが妄想か」を委ねられ、様々な感想を獲得しているところにこの映画の凄みがある。

 

特に最後のオチを理解したときの衝撃はすごい。そもそもジョーカーというのはいつもそれっぽい過去を語ってははぐらかす信頼できない語り手の権化のようなキャラだ。その彼がカウンセラーに映画の話を語っていたというオチでこの映画は幕を閉じる。

 

つまり、僕やあなたが「社会情勢を反映している」「ジョーカーは無敵の人だ」「誰しもの心の中にジョーカーがいる」と思ってその事実に鬱々としている中でそれをあざ笑って終わるのだ。「えっこの映画からそんなこと感じ取っちゃったの、ウケるー」と言わんばかりの煽りととれなくもない。

 

僕は恥ずかしながら映画の後の感想巡りでオチの意味に気づいたのだがいろんなことがこの気づきでストンと腑に落ちた気がする。ジョーカーは、貧困の中で認められず蔑まれ、感情が高まって人を殺す、という過去が似合うかというとそんなに似合わないキャラである。

 

そんな彼にも意外な過去があった、そんな風にも受け取れるし、実は全部ホラ話と捉えることもできるかもしれない。ダークナイトで語られるジョーカーの過去のように。

 

このオチは、この映画に「ジョーカーらしさ」を補完しつつその上で観客をさらに混乱させて

 

「もしかして、こんな話に共感しちゃったのは、俺自身がジョーカーが現れてほしい、街に火をつけたい、富裕層を殺したい、と根本的に思ってるからなのか?」

 

なんて思考の迷路に落としてくるのだから、これは本当に芸術点の高い映画だと思う。わかりやすさがもてはやされる、シンプルでわかりやすく極端なコンテンツがバズる昨今、ここまで様々な感情を受け手に抱かせる映画が持て囃されるのは、痛快ですらある。

 

その上、映像も音楽も素晴らしい。ひたすら緊張感を煽ってくるダークナイトと比べると、メジャーコードの明るい曲をうまく交える音楽。電車の照明が定期的に消える中での初めての殺し。階段をダンスしながら軽やかに降りてくるシーンで実感する「ジョーカーという存在」のカリスマ性。そして、耳にこびりつくような笑い声。

 

嫌でも印象に残り、そして、人によっては痛快なピカレスクロマン、人によっては世相を反映した憂鬱なドキュメンタリー、人によってはそれらを笑い飛ばすダークなコメディと受け取られる、鏡のような映画。ダークナイトとはまた別の方向で歴史に残るバットマンシリーズの名作として語り継がれると思います。