君が向いているのは YouTuber だよ

僕と違ってね。

 

昔々、僕が一番意識が高かったころ、チームビルディングの研修を受けたことがある。やたらフォントが大きくはみ出そうなパワポを作る先生だった。僕はその先生に聞いた。

 

「チームの中にモチベーションが低く目的意識もなく、お金のために会社にいると割り切ってる人がいたらどうすればいいと思いますか」

 

「…………うーん」

 

僕は畳み掛ける。

 

「それって感性の問題じゃないですか。別にその人が間違った人間というわけじゃないですし」

 

「それは、そのチームからいなくなってもらうしかない」

 

穏やかな顔をした先生は、そうやって言い切った。

 

そして僕は今も悩んでいる。もしくは、悩んでいるフリをしている。いや、本当に悩んでいる。本当にチームからいなくなるしかないんだろうか。

 

少子高齢化の社会だ。子供は生まれない。人工ピラミッドは綺麗な逆三角形。でも機械に任せるのは温かみがなくて嫌いな僕らは、未だ国会にすらパソコンを持ち込めない。

 

セーフティネットは日々ボロボロになっていく。そんな吹けば飛びそうなセーフティネットに、寄りかかる人は今後どんどん増えていく。

 

僕は知っている。みんな、変化なんて嫌いだし、責任を取ることも嫌いだし、何かと理由をつけて言い訳を探している。これは本来相手の仕事だ、という言葉が山彦のようにこだましていく。

 

そう、転職が当たり前の社会にはまだならない。最近見た一番面白い動画は速水もこみちの料理動画だ。YouTuber と芸能人の意味は重なりつつある。つまり、僕らではない。

 

お金を稼ぐことが目的でゆるく年功序列の世界を生きる「普通」の人達は、突然明日、昨日まで降格制度のなかった会社の新ルールで降格するかもしれない。それどころか、突然消えてしまうかもしれない。昨日まで僕のチームにいた彼のように。チームを守るため、だからね。

 

彼らはすぐに転職して「本当にやりたいこと」を見つけたりはしない。YouTuber にもならない。呪詛の言葉を吐きながらセーフティネットによりかかる。セーフティネットは、ここから神政治の力で再生したりは、しない。絶対にしない。

 

生き残るのは「変化に強い生物」である、言い換えれば「変化できない奴は死ぬ」。破れたセーフティネットの先で、楽しさを感じられる仕事は見つかるか。それは本来国の仕事だ、という言葉が山彦のようにこだましていく。そういえば、職場でもよく言ってたね、その言葉。

 

だから僕は言う。安直に。

 

君が向いているのは、YouTuber だよ。僕と違ってね。だから、これから、好きなことだけして生きていってね。さよなら。さよなら。さよなら。