思い出を切り取るハサミ

あぁ ロストマン 気付いたろう
僕らが 丁寧に切り取った
その絵の名前は 思い出

BUMP OF CHICKENロストマン」より


かなり長い時間をかけて作られたこの曲、始めは「〜シザーズ」という、思い出を切り取るハサミの曲だったらしい。しかし藤原さんは、その「〜シザーズ」という曲全体で伝えたい言葉が、たった何行かで表現できることに気付いてしまった。それがきっと、上にあげた歌詞の部分だと思う。結果、「ロストマン」はあまりに広い世界を内封した、器の大きな曲として僕らの前に現れた。


ところで最近の僕は、そんな思い出を切り取るはさみについて考えたりする。今が素敵だからっていう強い気持ちが、僕を揺らす。今に線を引いて、今をそのはさみで切り取って、絵にしたら綺麗な額縁にいれておきたいって思う。明日なんていらない気さえする。


きっと僕の人生が折り紙だったなら、箱を折るだろう。もうここから僕が出られないように。今が過去という何かに、ずっとずっと変わらないように。間違っても、鶴なんて折らない。どこか僕の知らない遠くへ、僕が飛んでいってしまいそうだから。翼なんて折れてしまえばいいんだ。


風の歌を聴け」で、主人公が鼠に言った言葉。
鼠が、「嘘だといってくれ」と願った言葉。


ある十字路で偶然すれ違った何かによって、いつのまにか、恐れていた対象が別の何かにすり変わっていた。僕は今、なによりも失うことを恐れている。つまりは、そういうことだと思う。