2022年ベストソング10選

noteに書いたんだけどここの読者の方は見てくれてなさそうなのでここにも投稿しておく。ぷんぷん。なんちゃって。

 

 

iPhone の再生数によって、2021年発表の曲を機械的に選びつつ、同じアーティストの重複を省いています。()内は僕の iPhone における再生回数です。

10. Habit / SEKAI NO OWARI(18)

セカオワはラップ調の曲をどんどんやって欲しい。その少し説教くさい歌詞もラップ調だと吐き捨てている感じが出て好き。歌詞の

大人の俺が言っちゃいけない事言っちゃうけど
説教するってぶっちゃけ快楽

Habit 歌詞より

あたりには流石に苦笑で、もうこの歌詞は流石に逆張りでもなんでもないし、耳にタコができるぐらい聞いたのでそろそろ「説教嫌だったけど飲み会全部断ったらそれはそれで人生味気ない」みたいな「次」が聴きたい気がするけど結局まだ世間はこの歌詞でいいって事なんでしょうな。みたいなこととか奇妙なダンスPV含めて、今の流行りそのものって感じの曲でした。

10. Overdose / なとり(18)

AIが絵を描く時代、ここまで洗練されたポップが19歳にて出力されちゃうんだなーって感じの曲。ひと昔前の30代の作曲家が書きそうな曲を19歳に気怠くてちょっとエッチな声で歌われてしまうと、年寄りは何をするんだろーなと、うすら寒さを感じたり感じなかったりしました。

10. I’m Your Treasure Box *あなたは マリンせんちょうを たからばこからみつけた。 / 宝鐘マリン (18)

ついにこの曲でJP VTuberの登録者実質トップに躍り出て、TikTokにて若年層のファンまで獲得したマリン船長。この自己プロデュース力の高さには唸る。サビで少しエッチなダンスに対応というバズポイントを抑えつつ、彼女の持つ年齢詐称ちょいエロ担当というキャラを存分に生かした少し時代錯誤な曲調が唯一無二のアイデンティティを示す。5年後には他者プロデュースでも名を成してそうです。こう言う台詞マシマシの遊び心溢れた曲、好き。

7. .SOU / AVTechNO! (19)

まさかの大好きな曲のセルフアレンジ。ひたすら独白を続けるような歌詞がサビの後にも続くリアレンジはバッチリ決まっていて、10数年後の回答とも思える。メタバースを目隠しで歩くかのような静謐な曲調の中、ひたすら自問自答を繰り返す思念の存在、初音ミク。まさかミクさんの声がここまで使われ続けるとは2007年時点では思ってなかった。録音した歌の癖をトレースするような調整ほぼ不要なボーカロイドも出る中、唯一無二の世界観を持つ初音ミクの独特の歌声に弾かれるプロデューサーはいなくならない。

6. 私は最強 / Ado (20)

いや本当にね、あなたは最強。と言う感じの2022年。ちょっと前からオクターブ上に跳躍する、喉に挑戦するようなフレーズが流行ってるんですが、この曲なんてまさにそれですね、わたしはさーい「きょー(オク上)」が出るか出ないかでカラオケで競い合う人類?よくわかりませんが、まあ当然Adoさんなら余裕でしょう。ミセスの独特の世界もバッチリ歌いこなしてもはや彼女に敵はないです。でも歌詞は、私は最強って「思いたい」という感じで、ちょっと切ないのもいいね。

6. まにまに / r-906 (20)

ボーカロイドが当たり前になって流石に尖ったプロデューサーも減ったな、と思ったらそんなことはなかったぜ、という感じの曲。クリスマスに出た「プシ」もそうですが、1分に切り取られ承認欲求を満たすだけのへたっぴダンスに使われていく曲たちへの皮肉と言わんばかりの長尺間奏と、それでいてなんだかんだキャッチーなサビ、というサービス精神のバランスがとても素敵。やっぱりオブラートに包んでみんなに聞いてもらいつつ、こっそりネチネチ刺してこそ上等なアイロニー。見習いたい。

4. 心眼 / Lanndo feat.須田景凪 (23)

もうひたすら曲調が好みで何度も聴いてしまう Lanndo ことぬゆりさんの「なるべく人に頼る」というコンセプトのアルバムより。洗練されたダンスビートにブリブリの電子ベースにカットアップ、なるべく人に頼っても消えないぬゆり印の曲調そのものって感じで最高でした。

3. 新時代 / Ado (45)

イントロを聴いてられない昨今の世代にアピールするアカペラ(そして最後の一音でやはりオク上に跳躍)で掴んでからいつもの耳に痛いぐらいコンプレッサーでぶっ潰したテクノビートで聴かせるヤスタカ調に移行していく職人芸。ヤスタカ氏健在ですね。歌詞も上手く、この曲にも随所に不穏なフレーズを散りばめ、映画を見終わる頃にはダークな曲にしか聞こえないのは見事な仕掛け。つまり

 邪魔者や嫌なものは全部消しちゃえ!
 世界を思い通りに変えちゃえ!

・・・ってことですよね。表では多様性とか言いながら、裏では子供が公園で騒ぐと市役所に文句を言って公園を閉鎖し、快適さの下に要らないものを削除して世界を思い通りにしていく。そんな殺伐とした時代が、新時代ってことなのかもしれない。

2. KICK BACK / 米津玄師 (49)

米津玄師×常田大希×チェンソーマン、と言うビッグコラボでありながらしっかり期待値を超えた曲を出してくるあたりが時代の寵児って感じですね。まず「努力!未来!A beautiful Star!」というモーニング娘。の明るいフレーズを思いっきり暗黒な感じにサンプリングするところが尖りまくってるのにそれに飽き足らず全編を通したざらついたボーカルプロダクションとがなり声を上手く使った歌唱。しーあわせになーりーたーいーらーくしていきーてーたーい、なんて言いつつもなんとなくノリで「努力」とか連呼してしまうあたりの信じられないほど薄っぺらさを持つデンジこそ、今の時代のヒーローだなあと思います。僕らは本当は尊い存在、という昭和的世界観に明確なNOの解答をし、薄っぺらい自分を受け入れ、ひろゆきを祭り上げて適当に世の中をハックして自分だけ助かろうとする令和の感性。まさにこの曲がテーマソングですね。
ささくれ立ってんな。

1. Celestial / Ed Sheeran (81)

そして唐突な洋楽が再生数1位(個人的にはいつものコト)。3日で世界で1000万本と、アホみたいに売れたポケモンSVの主題歌ですが、これは時代に合いつつも前向きな歌になっていて、KICK BACKと裏表で2022年を表現してるかのような曲だなあと思います。これもやはり歌詞がポイントで、

We were made to be nothin' more than this
生きていくために、それだけのために僕らは生まれた

和訳は公式動画の字幕による

と言うフレーズが後半のサビで印象的に繰り返される。

「生きていくために、それだけのために僕らは生まれた」という力強いフレーズはまさにこの時代だからこそ出てきたフレーズという感じがする。夢を願うためでも叶えるためでもなく、些細な日常に魔法を見つけ出そうよ、というメッセージは凋落していく世界の中で希望を見つけるためのヒントのようにも思える。最初に和訳付きで動画を見たときちょっと泣けた。

みんなで夢を叶えなくても、ゲームの向こうにいる電子データのポケモンやネットの向こうにいる配信者と、何気ない日常に少しの魔法を感じて生きていく。なんか、ほんと、切ないよな。

(Appendix Not 2023) Penguin’s Detour / 林田匠

今年の曲じゃないけれど、今年一番衝撃を受けたのはこの曲でした。全編、陰鬱で凄惨な歌詞はすべてのフレーズが鋭利な刃物のように心臓をザクザク削られるような痛みが。普通の曲はペンギンをモチーフにした場合「飛べない鳥だからこそ見えないものがある」というメッセージになると思うんですが、この曲の絶望はさらに深く

あるはずがなくなっていた ゆらり揺蕩ったまま
寄る辺なく縋っていたはずだったのに
思いを遡ってみたって思い出せないね
それが端からあったものなのかすら

飛べない鳥になっていた ふらり彷徨ったまま
空からじゃ見られない眺めがあるんだと
言葉へ落とし込んで最後 嘘に変わってもね
ただそれとなく伝わるものがあればいい

https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/40843.html

ぐらいまで踏み込んでいる。切実な思いは妄想かもと切り捨てられ、言葉は嘘に変わるかもしれない。「絶望と希望は紙一重というかもうほぼイコール」とは僕の好きなプロ奢らレヤーの言葉だが、この曲はそういう意味では本当の「希望」の曲なんだと思う。けれど、ここまで踏み込むのもそこまで疑うのも、僕にはまだ辛すぎる。

この超絶シリアスな世界観でいて、作者ご本人が「暗いだけにしたくなかった」と導入した軽快なリズムはとてもこの曲を聴きやすくしており散歩にも合うが、なんというかダンサーインザダークみたいな、明るさがあることがさらに暗さを増している感もあるよなと思ったりする。

歌は原曲の初音ミクさんか、Sekaiさんの儚く神経質な歌声のものが好きです。こんなとんでもない曲が、いろんな人によってたくさん歌われているというのもすごい状況だ。「曲に落とし込んで、嘘に変わって(格好つけた歌として消費されて)もね、ただそれとなく伝わるものがあればいい」なんて解釈は、少しこの曲に入れ込みすぎかもしれない。

2022年のまとめ

時代のムードにあった曲をたくさん選んだ気がします。多分僕は今が好きなんでしょうね、衣食住全部足りてて、娯楽は無限、家から出ないで仕事もできる時代なのに幸せになれないなんてSF小説みたい。

あとやはり、動画とセットでプロモーションされる今の時代に大事なのは歌詞ですね、どこまで世の中を見据えて、本質を歌詞にねじ込めるか。どんどん複雑化するメロディとアレンジ、短くなる時間。歌詞、拙作で私自身も本気で書いてみたけれど、少なくとも深夜3時に Penguin’s Detour 聴きながら散歩するぐらいには自分を追い込まないと書けなかったです。本当にしんどいですよね、何かを生み出すって。

去年はこちら
https://so-na.hatenablog.com/entry/2022/01/13/093755

すいちゃんのファーストテイク

VTuberがファーストテイクにでる時代が来ましたね
荒らしがチャット欄に来てたのは(対応していたスタッフさんには申し訳ないけれど)とてもよかった
ヒップホップが始まった時もそうだけど革新が起こるときは「こんなのは音楽じゃない」って必ず抵抗される
つまりこれは、革新だったってことだ
もう生まれた姿のままいる必要もない

エレベータ・ダンスホール / 初音ミク+可不 ( 無色透明祭参加曲 )

Vo. 初音ミク+可不

Guiter. タケユキさん ( タケユキ (@Takeyuki_Tkyk) / Twitter )

作詞/作曲/MIX ソウナ

 

無色透明祭参加曲。

ひたすら「何かしたいけれど何もできない」と言い続ける曲。

 

エレベータ・ダンスホール 歌詞

何かが足りない

言葉にできない 何かを求めて

最悪の時代

はっちゃけられない 自分を見つめて

さよならバイバイ(TuTu

ららららララバイ(FuFu

十五夜オートバイ(Oh yea yea yea yea yeah

強化された窓ガラスは割れない

 

言葉を手にして言葉で遊び

憂鬱を隠して歌を口ずさんだ

怠惰を手にして怠惰で遊び

退屈を隠して歌を口ずさんだ

孤独を手にして蠱毒で遊び

猛毒を隠して歌を口ずさんだ

忘れた頃の真夜中の地下鉄で今立ち尽くした

 

心に在る流星がひどく騒いでた

溶けるほどにメラメラ燃えてるが

見えねえ

 

大好き大嫌い

会いたくないみたい 解釈の違い

キャッチャー・イン・ザ・ライ

とにかく恋したい ボタンの掛け違い

再開の誓い(TuTu

才覚の違い(FuFu

道化師の芝居(Oh yea yea yea yea yeah

虎穴に入らずんば虎子は得られない

 

普通を手にして異端をなじり

特別を破棄して歌を噛み殺した

苦痛を手にして夢中で掲げ

幸せそうにする人を轢き殺した

非通知呼び出し宗教勧誘

輪廻転生すらお金で買えるなら

めでたしめでたしここでゲームセット

二週目はいらないな

 

空に落ちる流星がひどくぼやけてた

指の隙間 ゆらゆらゆらゆれていた

誰もいないエレベーターで踊り狂ってた

襟を締めてふらふらモブになり

消える

 

Horizon Zero Dawn をクリアしたよ

匂わせ程度のネタバレあり。

(それが気になる人はそもそも読んでないと思うけれど、念のため)

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はじめに 本作の面白さとは

人間はミスを犯す生き物である。
その上体裁を気にするし、過去の失敗にうじうじ思い悩むし、思ってる事と言動や行動が一致しない。そんな生き物が自分達を何度も殺すことが出来る力(核兵器)を手に入れているのが今である。なんで僕らの世界は滅んでいないんだろう。それ自体が奇跡としか思えない。

……と、そんなことを考えてしまうのが本作である。本作のストーリーはこの不完全な人類の機械の技術がより進歩したら、の答えの一つだった。スティーブ・ジョブス氏、いや今なら、イーロン・マスク氏のような希代の成功者が技術の使い道を誤り、意図せずに人類を破滅に導いたら?

これまでもテクノロジーが世界を滅ぼす(もしくは滅ぼしかける)ストーリーは数多の作品で描写されていた。例えば、本作の1年後にリリースした「デトロイト・ビカム・ヒューマン」がそうであり、ドラえもん映画の「ブリキのラビリンス」もそうである。「天空の城ラピュタ」もそうだ。ラピュタは滅びる。「人間は地上から離れたら生きていけないのよ」という言葉はあまりに示唆的だ。やはり滅亡を避けるためにはテクノロジーを信奉しすぎず、地に足をつけて生きていくべきだ、そう、多くの創作が示している。

しかし、現実はどうだろうか。原子力発電は持続可能性のために必要不可欠で、火星に人類を移住させたいと本気で思っているイーロン・マスク氏が世界的な成功と国家予算レベルの富を手に入れており、人間はアニメ「PSYCHO-PASS」の登場人物曰くの「スマホに脳の一部を委託」しており、現実の自分の姿に愛想を尽かした人々はVRゴーグルをつけて可愛い姿になって寝ている。人類は時に病みながらもテクノロジーを進め続け、もうすでに大地からだいぶ浮いている。まるで、壊れたエレベーターに乗っているかのように。

本作の世界はそんな現実をきちんと見つめている。技術で滅びる人類を救うのは……脱技術、ではない。技術の過剰摂取で滅びの運命に誘われたとしても、結局人類に残されているのは技術である。ここが、本作のストーリーの大きな分岐であり、他のゲームと大きく差別化されている、と個人的に感じた部分である。

そんな人類と技術の関係を真摯に見つめた物語の世界が、オープンワールドとして眼前に広がる、面白くないわけがない。これはそういうゲームだった。

ビジュアル

美しすぎる世界だ。荒野の夕焼け、ジャングルのスコール、吹雪の夜、その中に佇む鋼鉄に囲まれた部屋と壊れかけた音声データ。一体どれぐらいの労力をかければこんな世界が作り出せるのか分からない。具体的に言えばスタッフロールが45分かかる程度の労力だろう。とにかくすごい。

ストーリー

冒頭で言った通り、技術に呪われている人類と真摯に向き合ったストーリーは圧巻。始まりはありふれているが、着地点がすごい。このストーリーを体験するためにプレイする価値がある。

なお、余談だがイーロン・マスク氏は本気でAIが世界を滅ぼすことを心配しており、GoogleのCEOに相談しているらしい。おそらくこのゲームのファンに違いない(これはジョーク)。

キャラクター

いかにも日本っぽい、美少女美少年はいない。主人公はまあそう育ったらそうなるよねといった感じで、筋骨隆々としてガタイが良いし、モブも含めて記号的な美男美女は避けられリアリティに終始している。和ゲーに慣れている私は面食らったが、これはこれでストーリーや世界観に集中できる良さがあるので、どっちが良いというものでもないだろう。ポリコレ受けもこっちのがよさそうだ。

キャラクターの造形はとても魅力的だ。僕はヘビメタ大好きプログラマー、テイトが好きである。さらに、モブに話しかけても永遠に会話が続くのに最初はびっくりした。「ここはアリアハンだよ」を連呼するわけじゃないのか……と感動したが、長くプレイするとこれはある種類のモブに共通の会話ルーチンがあるだけだと気づいた。気づいてしまうとモブに個別に話しかける気が無くなるので、ここは良し悪し。

サブクエストと収集要素

素晴らしい。音を絞ったオーケストラの中で紡がれる、民族抗争が主軸の物悲しい人間ドラマに溢れるサブクエ。異端者と会話しないようにすべて「神よ」とつけて話すばあさんしかり、モブのキャラも立っている。収集要素も多彩で、過去の音声データをスキャンして聴きながら廃墟を進む時の雰囲気は最高だ。ワクワク感がたまらない。同様のシステムはニーア・オートマタにもあるが、没入感はニーア以上かもしれない。

戦闘含むゲームシステム

面白い。人類文明が狩猟まで落ちた都合で基本的に弓矢と投石機で戦う。一撃必殺の武器を持つ機械を長い草の中にしゃがんで隠れながら、弱点に弓を引きしぼる、緊張感がすごい。この戦闘システムに夢中になる人も多いだろう。しかし。

唯一の欠点:3D酔い

僕はもともと3D酔いが強いタイプだし、3D酔いしないように工夫を凝らす「星のカービィディスカバリー」や「どうぶつの森」のようなゲームが素晴らしいことも、それによって、失っている自由度も理解できる。しかしこのゲームは特にひどい。

・矢と投石機で敵を狙う都合上、カメラの遠近が激しい

・狭い道を見つける廃墟ダンジョンのカメラの移動が厳しい

・空飛ぶ機械や援軍により挟み撃ちされた時の緊張感とカメラ回し

・あまりに美麗なグラフィックにより見つけづらい引っかかり(ボルダリングのような手を掛ける点)を壁にカメラを貼りつけながら探すしんどさ

などなど、あまりに厳しく、真面目に戦闘を繰り返すとゲロゲロに酔うため、僕は難易度を最低に落とす事を余儀なくされた。正直ちょっと悔しかったのだが、仕方ない。それでも、酔いながら崖から引っかかりを探すのはしんどく、びっくりするぐらい僕のアーロイは落下により命を落とした(次作では見つけやすくフォーカスされる機能がついたらしい)。

また、シナリオに入る時にシームレスに導入が始まるのだが、カメラを動かしすぎると酔う私からすると「ほら、そこに入り口があるだろ」とか「おーい、こっちだ」とか言われてもどこを指しているのか理解するのに一苦労で、ここも没入感を阻害した。

この点は3D酔いしない人にとっては全く問題にならないだろうが、僕がこのゲームを5年積んだのは完全に3D酔いのせいである。同じ症状を抱える人はまず難易度を「Story(機械の前に突っ立って集中砲火されても死なないのでカメラを動かさず戦闘できる)」にしてみてほしい。あとから変えられる。

まとめ

総評:★★★☆☆(☆は3D酔いが原因)

欠点は3D酔いがひどいところだけ。この重厚なオープンワールド技術オタクSFは、今からでも遅くない(実際2022まで積んでも全然遅くなかった)から、ぜひ、プレイしてみてほしい。

「無色透名祭」で知名度が質に関係ないことが証明されたってホント?

 

多分三年ぶりにボカロ新曲出してみました。無色透「名」祭という、その名の通り、サムネも動画も無味乾燥なもので作ることの制約と作者名の非公開というところに惹かれて、腕試し的に投稿した感じです。

割とこう無名らしく姑息に「動画でもサムネでも差がつけられないなら、タイトルで露骨にオマージュを匂わせてはどうだろう」というちょっとした計算も交えてやったのですが、まあしかしメロディはベースなしで一から考えたデモを使ったのもあり、結果は割と1日目から埋もれました。泣

他の曲も再生数の多い順・少ない順両端からせめて「これはxxxさんだろ」というコメントを見ながら、多分そうなんだろうなあと思っていたものは大体はずれました。

一番ショックだったのはきくおさんを見つけられなかったこと。

kikuo.fanbox.cc

再生数低い順に聴いていたはずなのですくなくともきくおさんは通ってた可能性があるんですが、全くわからなかったです。これは僕にとってもショックで僕の仮説の「再生数と知名度はあまり関係しないが、言うて多少は関係するし、1000万を超える方々は良くも悪くも個性はわかる」という曖昧なスタンスが完全に崩れたことになります。データだけ見れば、引用上のレポートにも分かる通り「全く関係がない」が正しい。

しかし、しかしですね、さらにひねくれた視点で見ると、このきくおさんの記事自体にヒントがある気がしています。有名な曲を持つ人は少なくとも質はともかく「有名曲の連想ができるフレーズや、それと分かる音作り」を唯一使う権利があるはずで、これは通常の作曲時には制約になりません。

無色透名祭の祭りのコンセプトも一つのバイアスです、多くの曲が真っ白なサムネから夏だったり匿名だったりというテーマを選んでいます。真っ黒だったらまた違うはずです。つまり、有名な曲を持つ人はそうではない人にない制約を抱えていたとも言えるのではないかと。僕がもしそちらの立場だったらやはり「少し自分のいつもの作風と変えつつ(あからさまだと粋じゃないから)、でも深く聞けば分かる」用に作りたいと思いますし、これも制約かなと。

もちろん、だから「有名な曲を持つ人は力を発揮できなかった」というつもりもないのですが(そもそも無名な僕にそれを主張するメリットは全くない)、このデータのみで「全く関係ない」と言い切ることも早計かなと思ったりしました。

ただ、MIXというか、音の良さは、曲そのものの良さとは異なり、聞き手に「売れる曲っぽさ」を感じさせる一つの基準を担ってると思います。だからこそ、カオスを好む人は逆にMIXが拙い曲を選ぶ、という。

僕が音楽に関して勝手に信じてる言葉は二つ。

 

「プロっぽさとは音質である」by 向井秀徳(ZAZEN BOYZ)

「プロは常に80点を出さなければいけないので、本気で景色が変わるような人生の体験を詰め込んだ100点のアマの曲には勝てない」by Dixie Flatline(ジェミニやJust Be Friendsを作られた方)

 

前者は今回もちらほら見えました(が、無色透名祭はそこまでぶっ飛んだ音質の曲は少なかったように思います)。後者は「プロ≒有名な曲を持つ人」とは言えないと思いますし、全く関係がないとも言えるのですが、常に80点が出せる、をプロと定義している以上、全くプロとアマに差がない、とは言っていないので「有名な曲をいくつも持つ人は常に80点の曲が出せる」と解釈するとちょっと関係があるかなと思います。

というわけで、有名な曲を持つ人は今回、少々難易度の高いルールの中で参加していたような気もする(ので、またこう言うお祭りがあったら、めげずに参加してほしいなあ)と思ったのでした。

総じて、非常に興味深い面白い実験ができる企画だったと思います。次は再生数も隠してみてほしいと言う気はするけれど、それをやるとライトな聞き手が全くとっかかりがなく、全体の再生数が下がってしまいそうな気もするので運営は難しそうですね。とにかく、一参加者として楽しかったです、ありがとうございました。

彼女が観客にサイリウムを置かせた瞬間、フロアが湧き上がりました (Mori Calliope Major Debut Concert - New Underworld Order) #CalliSolo

 「サイリウムを置いて」アンコールのMCで彼女がそう言うと、マスクを通して少しくぐもった、喜びの歓声が会場に響き渡った。

 このライブにサイリウムはいらない、みんな、そう感じていたからだと思う。

 

 違和感は最初からあった。1曲目「guh」のぶっといキックと怪しいシンセサイザーが醸し出す妖艶な雰囲気の中、Mori Calliope はどこからともなく美しいベールをまとった死神の姿で現れて、トレードマークの高速ラップを歌った。

 ーーなんて格好いい。でもそのアニメちっくな姿はどこか可愛い。観客も戸惑っていた。僕の右斜め上の人は手を高く上げ指は下を向けて上下に揺れる「ヒップホップしぐさ」だったが、隣の人はシンプルにサイリウムを振っていた。おのおの、音楽にノッていて、楽しそうで、でも正しいノリ方がわからない、そんな光景を目の当たりにしながら、スクリーンの前の死神は美しくラップしていた。汗が飛び散る姿が見えるかのように情熱的に。

僕はサイリウムを持った右手で「ヒップホップしぐさ」をしていた。違和感は最初は、刺激だった。これまでのライブで、こんな不思議な雰囲気の会場を、一度も見たことがなかったからだ。

 

「今日は長いMCはしないです(NO, long MC Part Today)」1曲目が終わるとカリオペ氏は少し不安げに英語で言った。歓声が上がると、少し意外そうな反応をしていた。もしかして「長いMC」って言葉だけ聞こえたのかな? と死神らしからぬ面倒見が良い真面目な彼女は戸惑っていたのかもしれない。しかし続けて、はっきりと言った。

「みんな今日は何を見に来たの? ゲーム? 雑談? ASMR? ……忘れて。
 私の歌を聞きに来たんだよね?」

さらに大きな歓声が上がった。伝わったことが嬉しそうだった。ワクワクが止まらない、ライブの始まりだった。

 

 ぶっといKICKが特徴のダンスチューンが続いた。最新EPから「Holy 嫉妬」「Kamouflage」「Dead On Arrival」。どれも決して明るくはなく、タイトルからも分かる通り(Shitと嫉妬をかけたり、camouflage をKにしたり)深読みを促すような凝った歌詞を持つ曲だ。しかし、強いダンスビートは会場を確実に盛り上げていった。

 

 てにをは氏(Ado「ギラギラ」など)作曲のどこか日本的な雰囲気のある「Red」を挟み、ここからはコラボゾーン。

 まずは「がうる・ぐら」が登場する。全Vtuber Top の400万人の登録者を持ち、いたずら好きの幼女のような声でいて、抜群のリズム感を持つ唯一無二のライバーでありシンガーだ。彼女とのコラボシングル「Q」、そしてそこから彼女の世代である Hololive-EN Myth (神話がモチーフと思われるファンタジーなメンツだ)のメンバー全員をバックダンサーに従えるサプライズを交えた「The Grim Reaper is a Live-Streamer(死神は配信者)」で盛り上がりは最高潮を迎えた。それにしても、 Vtuber は姿が特有で手足が長く、ダンスが映える。

 次に Hololive-JP 随一のシンガー「星街すいせい」が登場。カリオペ氏が主体のコラボシングル「CapSule」とすいせい氏が主体の「Wicked」をクールに決めた。カリオペ氏があえてプリンセスではなくプリンスと呼び、現れた すいせい-Senpai は「カリオペさんの音楽のスタイルが、すごく好き」とMCをし、曲の終わりでは手も降らずにすっとステージの隅に消えていった。アイドルとしては少し名残惜しくなるような退場にも思えたが、これも音楽が主体のライブらしい演出なのだと思う。初めて聞くすいせい氏の声はとても伸びやかで、彼女の意志の強さが現れているような凛とした力強さを持っていて心奪われた。

 最後は Hololive-JP 唯一のラッパー、角巻わためさんが登場。想像より可愛い声だったが、カリオペ氏が「ラッパー」と紹介するだけあって、未発表の日本語、英語で掛け合うラップ曲は圧巻の楽しさだった。そして人気曲「曇天羊」。エモいロックに乗る高速ラップがとてもかっこいい。ライブで聴くとそのビートの強さも印象に残った。彼女も曲の終わりでは、マントを翻してすっとステージの隅に消えていった。

 

 コラボゾーンが終わるといよいよ彼女も本気だ。ここからは歌メインの曲も交える。歌もラップも疾走感あふれる「UnAlive」、アニメPVが大人気の高音が美しい「Dawn Blue」。

 

 「最後の4曲です」とここでMCを挟んだ。敢えてあと何曲か教える彼女からは「こんな短い時間じゃ足りない、もっともっと歌いたい」と言う気持ちが見えるようで、このライブに懸ける熱意を感じた。といってもメジャー1stライブで23曲歌える(しかもうち5曲がコラボ)アーティストというのも稀有な気がするが、この辺りは Vtuber 事務所所属という強みを最大限に生かしていると思う。とはいえ、あれだけ配信してていつ曲書いて練習しているのだろうか……。さすが死神である。

 

 爽やかな「Lose-Lose Days」、「Scuffed Up Age」「Live Again」と少し Lo-fi な歌モノが続き、チルい雰囲気になる会場。彼女は日本語と英語両方を駆使し、歌とラップどちらもこなす。つまり4人分の歌声、強すぎるスキルだ。最後は僕の大好きな曲「end of a life」で思わず声が出た。彼女が「冥界のラップシーン」と呼ぶ「ニコニコ動画日本語ラップシーン」に名残惜しさを感じながらも、メジャーシーンに進んだ彼女の決意が現れている。「私は飛ぶよ。証もないけど。」とかすれ声で歌う彼女の極めてプライベートな感情が会場を静謐な雰囲気に染め、濃いピンクのサイリウムが揺れていた。

 

 しかしもちろんここでは終わらない。約束されたアンコール。3Dでは初公開のルーズなラッパースタイルで再登場した彼女と、そしてステージ上部に現れた DJ TeddyLoid。ここからは上がっていく、ガチのダンスタイムだ。「Make 'Em Afraid」そして、シンプルなトラックゆえスクラッチテクニックが抜群に光る初期の名曲「DEAD BEATS」、メジャー1st EPシングル「MERA MERA」と会場のボルテージが上がり続けていく。そして冒頭のシーンへ。

 

 「サイリウムを置いて、スマホをだして」ーーこの瞬間、アイドルと Hip Hop を危ういバランスで両立していたこのライブが、完全に Hip Hop フェスのノリに変貌した。ライブの空気が(観客への丁寧な導入を経て)「自然に」変わる瞬間。歌って、とお願いしなくてもみんなの気持ちが一つになることで、自然に起こる合唱のような、多種多様な観客の心が一つになる瞬間。これが見たくて、感じたくて、僕は会場に行く。まさか、 Hololive からこんなステージを演る演者が現れるなんて、面白すぎる!

 

https://twitter.com/sinzi_v/status/1550093578558652416?s=20&t=eAGsmmryB4PkvEPUOFNxhA

 

 「HUGE W」「Let's End the World」そして、あの曲のビートが聞こえてくる。

 

 「みなさん、今日も楽しいライブに来てくれて誠にありがとうございます。今日も rap したいと思います。では、はじめましょうか……fuxxkin'」

 

www.youtube.com

3200万再生を数える彼女の鮮烈なデビュー曲「失礼しますが、RIP♡」

 

 おそらくこの光景を思い描いて書いた歌詞ではない(ライブ配信の冒頭という設定だろう)、しかし、まさにこの瞬間のために生まれたかのような、完璧なイントロじゃないだろうか。気持ちが盛り上がりすぎて、手が震え、まともに撮影できなかった。最後まで歌いきって会場に倒れこむ彼女ーー。圧巻のパフォーマンスだった。

 

 「リアル」を矜持とし、歌う自分の姿で言葉に説得力をつけるラッパーと、偽りの設定をまとい、スクリーンの中で歌う宿命を背負った VTuber 。誰もが相性が悪いと考える組み合わせだ。確かに、彼女が出てきた瞬間には違和感があったような気がする。しかし、だからこそ、アンコールで全員がラッパーとしての彼女に染まる瞬間には、鮮烈な印象が残った。

 Vtuberのライブとしては極めて簡素な、黒背景のスクリーン一枚と少しの装飾がなされた豊洲ピッドのステージで、死神の姿のまま会場を縦ノリに導いた彼女からは、歌に対する真摯な魂を感じる。この全く体験したことがない新しいライブは、バーチャルとリアルが実は地続きで、魂はスクリーンを隔てても伝わることの証明なのかもしれない。

 彼女のライブを見て欲しい。

 できれば、リアル(会場)で、汗だくで、飛び跳ねて欲しい。

 

「みんな今日は何を見に来たの? ゲーム? 雑談? ASMR? ……忘れて。
 私の歌を聞きに来たんだよね?」