前作の攻撃的かつ実験的なアルバムで、未だに現役でパンクロッカーな一面をみせたマニックス。しかしこの最新アルバムでは、歌を大事にし、ポップな一面を全面に押し出しています。
しかし、このアルバムを果たして「歌モノポップ」の一言で片付けていいものですか?
こんなにも心が震えるのに?
ところで、マニックスってすごい攻撃的な佇まいを持つバンドだけど、メロディはあまりにUK的で、非常に抑えが効いていると思うんです(もちろんそれを歌うニッキーの声はそれに反してドラマチックなんですが)。そう、もしあの疾走事件や社会的な歌詞がなかったら「地味にいい曲を書くバンド」っていわれていたかもしれないくらい。
何がいいたいかといえば、今回の「80年代的*1な、カラフルなギターやキーボードで装飾された、キラキラしたアレンジ」の中でその抑えた美しいメロディが、ニッキーの歌声が、驚くほど生えるということです。シングル曲で二曲目の「The Love Of Richard Nixon」、三曲目の「Empty Souls」を聞いてみてください。どうですか?キラキラして、でもどこか物悲しいアレンジの中を泳ぐニッキーの歌声。その繊細さと、芯の通った強さ、そして美しさに、心が震えませんか?そういうことなんです。
本当に真摯なバンドですよね。イギリスには、こんなバンドがいて、まだ歌っていると思うだけで、羨ましいし、胸がいっぱいになります。歌モノってうわさを聞いて、「なんだ、前作みたいなロックがもう少し聞きたかったのに」とか思っていた僕を、衝撃的に惚れさせてしまったアルバムです。
しかし「The Love Of Richard Nixon」なんか、ニッキーが驚くほど低音で歌ってますが、こんなに低音も素敵なヴォーカリストだったんですね。このバンドの魅力はまだまだ、出し切られていないんだと思うと、なんだかうれしくなります。